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研究会紹介 平成22年度第2回宗教法制研究所主催法律研究会

日時2010年12月22日(水)15:10~
報告テーマ企業買収における取締役の責任はどうあるべきか
報告者村上康司(商法)

90年代後半から株式持合いの解消が進み、海外機関投資家の持株比率増加による敵対的買収の脅威から、買収防衛策を採用する企業が増加し、買収防衛策をめぐる法的問題点が次々と明らかになり、実務上も明確なルールの存在を求められるようになった。しかし、国内の状況を見てみると、①企業買収に関するルールの整備状況は必ずしも十分とは言えず、②買収防衛策にあたり、どの機関がどのような役割を担うべきかについても確定的な考えがあるわけではない。

① の問題点については、「企業価値報告書」や、「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の公表により、一定のルール作りへの取り組みがなされ、裁判例においても、不公正発行に関するいわゆる「主要目的ルール」を足掛かりとして、いくつかの事例において、解決策が図られてきている。他方、②の問題については、様々な見解が対立しており、その問題は、企業買収において、取締役が防衛策を講ずることができるのか、できるのであればどのような条件・内容であるのが望ましいのかという点に集約される。この問題は、企業買収の局面において買収防衛策が必要であるか否かは、経営事項について情報と見分を有する取締役が判断することができ、取締役の判断が不合理であったため、株主が損害を被ることがあるとすれば、事後的にその損害賠償を取締役に対して追及することにより、取締役の行為を規律付けることができると考えられる。

この場合の、取締役に対する責任追及に際して、企業買収に関する判例の蓄積が相当程度みられ、我が国の近時の議論も強く影響を受けていると思われるアメリカ法においては、不利益を生じた株主が、取締役に対して直接的に責任請求しうる。EUにおいても、企業買収に関するルール作りへの取り組みがみられ、ドイツにおいては、株主による取締役への直接的な責任追及が認容される場合は、我が国において会社の支配権につき争いのある場合に、不公正発行を行うケースなどと局面が類似している。

これらの考察を通じて、取締役への責任追及にあたっては、取締役側に、防衛策が不合理なものではなかったことの挙証責任が課されるべきであると考えられる。買収防衛策として取締役が採った行為について、合理性が認められるのであれば、それは取締役の損害賠償責任の追及において、違法性阻却事由として考慮すべきである。ただし、株主総会の決議を得ていたとしても、買収防衛策の必要性についての司法審査を排除すべきではなかろう。損害額の確定については、どの時点を起算点として画定していくかについて、さらなる検討が必要である。

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