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持続可能な開発目標(SDGs)に関するオンライン発表会が行われました。


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 2021年7月10日に、尋木真也先生の国際法ゼミで、「SDGs -具体的取組みの提案-」をテーマに、オンライン発表会が行われました。今やすべての企業が取り組んでいるといっても過言ではない持続可能な開発目標(SDGs)。そのあるべき取組みについて、業界別に学生から提案が行われました。発表会には、各業界に就職したゼミの先輩方にも多く見にきていただきました。

 SDGsは、2015年に国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030 アジェンダ」の一部です。「貧困をなくそう」、「ジェンダー平等を実現しよう」、「気候変動に具体的対策を」など、将来の世代のニーズを満たしつつ、現在の世代のニーズも満足させる持続可能な開発(発展)のための17の目標を指します。法的拘束力のある規則ではありませんが、そうであるからこそ、国を越えて企業にまで柔軟に義務を課す構造が実現しています。そして、国家レベルにとどまらず、国民1人1人のレベルにまで意識改革が求められています。

 尋木ゼミでは、業界別に、注目すべき先例を紹介したうえで、自分たちで考えたあるべきSDGsの取組みの提案が行われました。特に、企業も顧客も社会もwin-win-winとなり、企業に実施のインセンティブが生まれる取組みを各班考案しています。
 ①国家の班は、海洋プラスチックごみとジェンダーの問題について、②警察の班は、公式アプリの改善について、③銀行業界の班は、ESGコンサルティング窓口の設置について、④住宅業界の班は、展示場を利用したバリアフリーなまちづくりについて、⑤食品業界の班は、SNS利用と被災地支援について、⑥鉄道業界の班は、新幹線による高速貨物輸送と中古車両の有効活用について、⑦メディア業界の班は、ラジオのSDGs番組、動画の字幕導入、映画館のごみ対策について、それぞれSDGsの提案を行いました。

 銀行業界に対しては、ESG(環境・社会・企業統治)コンサルティング窓口の設置の提案がなされました。SDGsの取組みの先駆けとして、銀行ではESG投資やESG融資が行われてきています。環境等に十分に配慮した経営をしている企業は、持続可能に発展していくと考え、そうした企業に優先的に投資したり、よい融資条件を提示したりする取組みです。
 こうしたなか、地方銀行は、地域の企業のさまざまな情報をもっています。他方で、投資家はそうではありません。そこで、ESGないしSDGsに積極的に取り組んでいる企業を紹介するコンサルティング窓口を銀行に開設することで、そうした企業への投資を促進する取組みの提案が行われました。これにより、銀行(企業)は新規顧客や手数料を獲得し、投資家(顧客1)はよりよい投資ができ、ESGに取り組む企業(顧客2)は投資を受けられます。また、ESGに取り組む企業の活動が活性化することで、間接的に銀行もSDGsの取組みを行っていることになります(社会)

 食品業界に対しては、被災地への温かいご飯の提供に関する取組みが提案されました。これまでも、非常食の提供などのプロジェクトは実施されてきています。それに対し、この班からは、避難所で実際に調理まで行う提案がなされました。非常食は、パンや米の炭水化物が中心です。そうしたなか、寒い避難所で栄養価のある温かい食事が提供されれば、避難生活にひとときの安らぎがもたらされます。それにより、被災者の感謝の気持ちは大きくなり、その後優先的にその企業の商品を買ってくれるかもしれません。
 この取組みにより、食品業界(企業)は長期的な購買意欲を獲得でき、将来的な消費者となる被災者(顧客)は温かい食事に癒され、被災者支援という社会貢献にもなります(社会)

 鉄道業界に対しては、使われなくなった鉄道車両を、駅舎の一部としてミニ鉄道博物館にしたり、駅併設のカフェや図書館として利用する提案がなされました。これにより、鉄道会社(企業)は廃棄物処理のコストを削減できるとともに、駅に来る乗車料やカフェ等の利用料も得られます。利用者(顧客)としては、鉄道マニアの人を呼び込めるだけでなく、SNS映えやアミューズメント目的でも喜ばれます。そして、廃材の再利用だけでなく、地域活性化にも寄与します(社会)

 映画館に対しては、ポップコーン容器の販売の提案が行われました。容器を持参した客に割引やポイントを付与することで、購買意欲を向上させるとともに、現在の紙容器のごみ対策をする試みです。これにより、映画館(企業)はリピーター獲得とともによりポップコーンを購入してもらえ、映画を見に来た客(顧客)は安くポップコーンを買え、ごみ問題や地球温暖化対策に寄与することになります(社会)
 この提案で取り上げられたポイントカードについては、IT業界の卒業生から、DX(デジタルトランスフォーメーション)によるビジネスモデルの変革の提言がなされ、市役所職員の卒業生からは、将来的なマイナンバーカードの利用拡大の提言がなされました。

 この発表からは、SDGsの取組みは、企業の利益とならないボランティア的な社会貢献活動にとどまらず、企業の利益に直接・間接に資する活動であることがわかりました。そのため、企業には、SDGsに積極的に取り組むインセンティブが生まれます。そして、社会貢献の認識が、企業の社会的責任(CSR)という義務的なものから、企業発展のための権利的なものへと変容しつつあるとの結論が導き出されました。
 愛知学院大学は、2020年12月に、「中部圏SDGs広域プラットフォーム事務局」を日進キャンパスに設置しました。この事務局を起点に、国連地域開発センター(UNCRD)等4団体と共同で、教育や研究に関するSDGsの取組みが行われています。この国際法ゼミの取組みも、SDGsの推進につなげていければと考えています。