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2021年11月11日(木)、法学会講演会の開催(講師、梅川正美先生)


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 11月11日の午後、法学会講演会が開催されました。今年度は、本学法学部客員教授の梅川正美先生に、「イギリスの宗教と法(剣と十字架)」という演題でご講演いただきました。
 梅川先生は、本学法学部で長年教鞭をとられ、法学部長、法学研究科長などの要職を歴任されています。また、政治学会などでたいへんご活躍されており、イギリス政治研究、とりわけサッチャー政権研究の第一人者でいらっしゃいます。

 今回の講演会で、梅川先生は、中世から現代に至る、イングランド教会の樹立とその変容について、「公認教会(Established Church)」「寛容制度」「信仰支援」「21世紀の問題」の順に詳しくお話しされました。すなわち、中世の教会はバチカンが支配していましたが、16世紀に、ヘンリー8世が武力によりChurch in EnglandをChurch of Englandに作り変えました。しかし、アングリカニズムには、リチャード・フッカーの神学にみられるように、神、君主のほか、これと対立しうる人民(people)と法の支配(rule of law)という原理がもともと組み込まれており、政体、教会、人々との関係は接合と緊張を含むものとして展開されてきました。
 19世紀からは寛容制度が始まり、イングランド教会が優位にたちつつも、一定の範囲で他宗教への配慮も示すようになりました。ただし、寛容とは限界づけのことであり、自由とは異なることに注意が必要です。20世紀に入ると、例えば、小・中学校のカリキュラムの宗教教育のなかで他宗教の信仰支援をすることが、一部の例外はあるものの、行われるようになっています(信仰支援)。そして、このような歴史の流れをお話しされた上で、梅川先生は、イングランド教会の今後について、イギリスなるものの理解も含め、問題を投げかけられました(21世紀の問題)。

 梅川先生のご講演は、国家と人々ないし個人との関係のあり方を、イングランド教会の樹立とその変容を通して考える、というものでした。そのお話の行間には、イギリスの分析をヒントに、わが国における国家と人々、さらには、わたしたち自身との関係のあり方について、自由に考えてみてください、というメッセージが込められていました。
 講演を聴いた学生たちは、ふだんは潜在して、ともするとみえにくい、国家と人々、あるいは個人との関係(例えば、戦争、宗教、裁判、選挙など)について、身近な問題として受け止め、考えることができました。